投資方針に忠実に退屈な投資で資産形成

日経ヴェリタスにおいて、
「2018年展望」というお題で対談記事が目に留まりました。

レオスの藤野氏は、WBSでも指摘していた通り、
賃金で従業員に報いている企業への注目しているようです。
「賃上げ企業は持続性が高い」とコメントされています。
従業員への還元は、
その企業のポテンシャルを高めて長期的に期待できる
と私も考えています。
ですので、私も従業員への還元については、
銘柄をチェックする際のひとつの指標にしています。
今年の投資方針の観点に追加した組織力の中で、定性的に織り込んでいるつもりです。


一方で、この従業員への還元の評価はとても難しい側面を有していると思います。
ただ横並び的な発想で賃金上昇をしていればいいわけではないですし、
平均年収だけではみえてこない従業員への還元の多様化もみられ、
その実態把握は一筋縄ではいかない面があると考えています。
また、業種やビジネス形態、もしくは企業規模によっても、
その幅や伸長率は一律でみればよいわけでもないわけです。
昨今では働き方改革という標語でもって、
状況はより複雑化しているものと捉えています。

経団連の動向を決めるトヨタ自動車の賃金交渉は、
我々が知る表面的な「ベア〇%」とか「一時金〇ヶ月」だけで把握はできませんし、
それを踏まえて大企業各社の動向だって、
結果だけみても真の企業の姿勢を必ずしも捕捉できるものでもありません。
まして、そのスキームが従業員のモチベーションに真に寄与し、
藤野氏の言うように、また私も期待している通りの
長期的企業の優位性確保に貢献できるものになっているかと言われれば、
はっきり申し上げてあまり自信がありません。
まして、中小型銘柄のベンチャー寄りの企業をイメージすると、
より平均年収や賃上げという目にみえる還元性向だけで、
それが重要指標であるかはより微妙かなと感じているところです。

少なくても、私の本業の会社においても、
この経団連加盟という横並び意識から、
会社全体でいえば一定の賃金改定は行われていますし、
平均以上の恩恵は受けられているのかもしれません。
ではこれを受けて、本業のサラリーマンとして、
何かモチベーションに変化があるか、忠誠心が増したか
といわれれば、やはりNOです。

賃金が2%上昇するということが、
企業にとってどれだけの負担になるかは、
投資家としてみるとなんとなくそこそこ影響が大きいぞ、と理解できますが、
労働者の立場でみると、イマイチ実感が伴わないのが私の感覚です。
ベースアップで2%の賃金改定が実現したとしても、
働き方改革の掛け声で何でも省力化、残業を減らせの無理難題でもって、
実態は目的が手段化することによる弊害もみられるわけです。

そんな中で、モチベーションや忠誠心なんて感情は、
私が窓際族であることを差し引いたとして、
周りのキャリア志向の高い同僚をみてもそんな雰囲気はありません。

私の会社では、割り切った安定を望む私のようなドロップアプト組と、
名声と役職が欲しい(もちろんスケールがでかいことをやりたい欲求も含む)
キャリア組とに大別されています。
どちらの立場に立ってもベース賃金や一時金の増額は、
ないよりあった方がよい程度で、
それとは違う所に関心があるというのが実態かなと感じています。
まして、なんとなく社会からの要請だからという受け身的な姿勢で、
会社がなんとなく従業員への還元色を出して、
それが一部のキャリア組(評価が高い)に厚く手当されていく実態は、
ある意味誰得なのだろうと感じるところです。
ドロップアウト組は(評価もあまり高くないので)、
結局のところそこまで恩恵を享受できませんし、
キャリア組は賃金より昇格による役職や立場により関心があるようですからね。


話が私の個人的なことで脱線しましたが、
従業員への還元については、
ただ賃金改定の状況や平均年収だけをみて、
評価をしてもそれはある一面でしかない
ということです。
まして、投資家として従業員が会社(事業)に邁進し、
長期的に企業価値向上に資する活動を成してくれるかどうかは、
もう少し複合的にみないとならない
と思うわけです。


コムチュアのようにアベノミクスが始まるより前から、
報酬体系へ経営がコミットして、
かつそれを従業員に浸透させることで
一定のモチベーション向上に努めている会社もあります。
この賃金への還元の意味が薄いというではなく、
むしろずっと前から地道に仕組みを考え、現場に伝え続けてきたから、
ようやく今、陽の目を見てその恩恵・効果が出ているという好事例もあります。
同社の場合、従業員への還元の定量結果というより、
そういう仕組みを全社で共有できる仕組みがあって、
それを実感する場(全社集会のようなもの)があることが
従業員にとっては強いモチベーションや忠誠心に寄与している気がします。
(賃上げ幅や一時金の額だけでは推し量れないということ)

ソーシャルワイヤーのようなまだベンチャー気質の会社が、
足元で平均年収が低いものの、
今から従業員に重要なKPI(一人当たり売上高)を意識させて、
それが将来自分達へ還元されることについて、
経営が現場へ浸透させる活動をしている、
そしてそれがようやく発現しそうになっているような会社もあります。
平均年収だけではなく、ストックオプション等の還元の多様性もありますし、
そもそも優秀な経営の下でベンチャーを学び経験できるという
ある意味「プライスレスな価値」を享受できるというオプションも、
なかなか定量的に評価はできません。
実は定量的に推し量れない部分が、
忠誠心やモチベーションにより寄与し、
結果、投資家目線でも満足できる期待を抱かせてくれるのかもしれません。


一方で日本BS放送は平均年収が比較的高いですが、
それは従業員の付加価値が相対的に高いというより、
業種としてマスコミ関連であることで高い年収傾向であると認識しており、
おお、この会社は従業員への還元がいいな、なんて思わないわけです。
そもそも、この会社ならではの付加価値ってなんだろうと改めて考えてみると、
相対的に高い年収にもやや疑問符もつくわけです。
なので、同社の場合、従業員への還元が高くて良い会社、
という評価というよりなぜ?というややネガティブにみえてきます。
こちらも定量結果だけでは評価は難しいと感じるわけです。


丸和運輸機関のようにいわゆる労働集約型の業態でありながら、
ここ数年をかけて賃金体系の抜本改革に試行錯誤している会社もあります。
それが平均年収という形にはまだ表れていないですし、
暗中模索の中で色々苦労も垣間見れますが、頑張っているようです。
しかし、独特な社風である意味では強い絆で結ばれています。
例外こそあれど、高い組織力とカリスマで士気を高め、
邁進している企業もあるわけです。


ステップは賃上げこそマイルドですが、
現場主義の先生を安定雇用でもって、
その拘りに徹底して応える現場を作っています。
競争や営業成績を競いながら先生の役回りという二足のわらじは履かせません。
同業から同社へ転職してくる人材が絶えないことからも、
現場主義に応えるステップは、地元ではブランドになっていることも
今回の株主総会でもって改めて実感したところです。
定量結果をみて、ステップは賃上げがマイルドだからダメな企業でしょうか。
私はそうは思わないわけです。
ただ、長期的なマイルドな成長をコミットしているわけなので、
懇親会という非公式な場で、
ストップオプション等で補助的に従業員への配慮への検討も付言してみました。
多様的なやり方の中で身丈にあるやり方で従業員に報いることは、
何も横並びの賃上げだけでなく、
労働環境や真の働き方改革を実践することでも成立するわけです。


他の銘柄についても書けばキリがないのですが、
結局、賃上げ等を通して、従業員への還元をコミットする会社は、
持続性が高いかと言われれば、
それは一要素でしかなく複合的に捉えるべきもので、
かつ従業員への配慮という点について本気であるか否かが重要という感触です。
「賃上げ」という定量結果だけで持続性の強弱は語れないと思います。
個人投資家としても、よく平均年収をみて、
表面的に会社の姿勢にフィルターをかけてみがちですが、
定性的な情報も含めてほんの一要素にしか過ぎない
という立場で私は今後も見守りたいと思います。

ですから、株主総会やIRの場では、
従業員への還元や人材への考え方については
深掘りをして聞くようにして、平均年収など定量結果だけをみて、
判断しないようにいつも配慮をしているつもりです。

今後も世の中のトレンドで少なくても表面的には
賃金へ配分という流れは続くと思いますが、
その中で真に人材を大事にして、
多様性をもってそれに向き合う良い会社に投資をしていきたいなと思います。


最後に、せっかくなので、一応平均年収の変化を羅列してみました。
四季報記載の情報です。2014年と2018年の変化です。
結局、これだけをみても、ふ~んとしかならないんですよね。

2014年1集号 → 2018年1集号


日本管理センター       437万円/32.7歳 → 509万円/32.7歳
サンセイランディック      636万円/34.1歳 → 688万円/36.1歳
アイドマMC            N/A   → 374万円/35.3歳
WDBホールディングス     610万円/42.6歳 → 580万円/39.8歳
IRジャパンホールディングス  N/A        → 1089万円/41.7歳
ルネサンス            516万円/34.8歳 → 547万円/36.2歳
あいホールディングス     502万円/43.9歳 → 551万円/47.3歳
ステップ              559万円/35.0歳 → 564万円/36.2歳
全国保証             660万円/34.8歳 → 641万円/34.7歳
丸和運輸機関          N/A        → 460万円/37.6歳
ソーシャルワイヤー       N/A        → 366万円/33.3歳
シュッピン             374万円/36.1歳 → 410万円/37.0歳
日本BS放送           N/A         → 732万円/41.4歳
ホクリヨウ             N/A        → 409万円/44.3歳
ひらまつ             428万円/30.0歳 → 423万円/28.1歳



ちなみに藤野氏は、記事の中の記載を受けて、
実際にはどのように従業員への配分という観点を評価していくのか、
とても興味があります。
まさか賃上げの有無やその額だけで機会的に判断するとは思えません。
では、直接ミーティングできる優位な立場を活かし、
どういう点を踏まえて判断されるのか自分の気づきにもなる気がしますので、
今後の動向を見ながら、自分なりに解釈をして理解を深めたいと思います。


皆さんは従業員への還元ということについて、
どのように投資判断に活かしているでしょうか。
中には、年収が高い=コスト体質もしくは損益分岐点を上げる行為と
それだけでネガティブになる方もおられるかもしれませんね。

コメント
この記事へのコメント
正直なところ、平均年収を投資判断に絡めていませんでした。(私が弱小投資家だからかもしれませんが。)
へぇーこの会社の人はこれぐらいもらってるんだなぁぐらいです。

自分の会社では最近人事改訂があり、平均年収がそれなりに上昇しましたが、改訂により各等級で給与の幅が設定されたため、(等級内での上限が設けられたため)、周囲のモチベーションが低下し、退職者も徐々に増えています。

これは対外的にはなかなか見えにくいところかなと思います。
やはり年収については定量的な面だけでは判断できないことかなぁと思います。
2018/01/09(火) 17:23 | URL | るな #-[ 編集]
>るなさん
こんにちは、るなさん。
コメントを頂きましてありがとうございます。

平均年収そのものは私も投資判断に加味しているというより、
参考に横目で見ているという程度です。

会社として従業員を大事にしているなんてよく言いますが、
人材はやはり欠かすことのできないリソースなわけで、
その人材への考え方を経営がどのように捉えているかを探る際の、
ひとつのバロメーターとしています。
但し、記事にも書いた通り、ただ年収が高ければよいとか、
伸長率が大きければよいというわけではなく、
複合的に捉えるべきと感じています。

るなさんの実体験においても、
平均年収はあがったものの、
社員の納得感が得にくい形でのモデリングは、
逆にモチベーションを下げてしまうことだってある、
ということがわかります。

ご指摘の通り、対外的にはわかりにくく、
単に年収という定量結果だけでなく、
そこへのアプローチや社員が納得感をもって
概ね働けている(そういう雰囲気を醸成しているか)など、
定量結果以外にも目を向けるべきことが沢山あるわけですね。


貴重な実体験を教えて頂きましてありがとうございます。

賃上げをしている会社に投資をするという時に、
まず賃上げをどのようになしているのかにも注目したいと思いました。

一律でベースアップなのか、評価制度や等級によって
重み付けをしているのか、
それを社員のモチベーションに繋げられるよう
どのような工夫をしているかなど、今後経営に質問出来る機会には
質疑応答のネタとして念頭に置いておこうと思います。

貴重なコメントを頂きましてありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。

2018/01/09(火) 22:37 | URL | まるのん #-[ 編集]
ご丁寧に返信頂きましてありがとうございます。
私の会社も経営層や人事は、制度の改定で年収が上がれば、モチベーションが上がるだろうと意気込んでいました(ほらこんなにいい制度になったんだよー、頑張れば年収あがるよーと。)が、それが社員の温度とはかなり違う感じがしています。

株主が見えるもの(IRや総会での印象等)と、実際の会社の中、雰囲気は異なることもあるのでしょうね。
だからこそ、定性的なことではなくて、定量的な数字でわかる指標が会社を評価する上で、分かりやすいししっくり来るのかもしれません。
でも、ふと感じる、この社長いいな!とか株主を大切にしてるなーって印象、感覚って、とても大事な気がします。そういう時に投資するのって、何か楽しいですし。

定性的な評価はとても難しいですね。
だからこそまるのんさんの、定性的な評価を楽しみながら読ませていただきますね。
2018/01/09(火) 23:32 | URL | るな #-[ 編集]
>るなさん
こんにちは、るなさん。
重ねてコメントを頂きましてありがとうございます。

経営と従業員に温度感があるのは双方にとって大変残念ですね。
外から見て特異な社風にみえても、
案外従業員もいい具合にその社風に染まっていて、
むしろ一体感が強いような会社もありますね。

一方で一見すると経営が真っ当な対応をしているようでも、
その施策の展開のやり方などに雑さがあると、
むしろ内部で軋轢が生まれてしまうこともあります。

なかなか難しいものですね。

ご指摘のように定量的なものの方が、
判断もしやすいですし、なんとなく受け入れやすいという
手軽さがあるのは事実でしょうね。
だからPERとかROEなどといった指標も、
投資判断においては重視されますsからね。

ただ、ふと感じる感性のようなものを組み合わせていくと、
仮説というか妄想の域ではありますが、
きっとこんな良い会社なのかもしれない、
なんてイメージが浮かぶこともあります。
私はこういう主観的な感覚は今後も大事にしていきたいなと思います。

仮にイメージと違った場合でも
その失敗は受け入れやすいですからね。

今後も私の妄想による投資は続きますし、
それを赤裸々に綴るつもりですので、
またコメントなどで叱咤激励を頂けますと励みになります。

今後もよろしくお願いいたします。
2018/01/10(水) 21:58 | URL | まるのん #-[ 編集]
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