投資方針に忠実に退屈な投資で資産形成


SBSHDの株主総会に参加しました。

同社はIRイベントなどでお見かけすることもなく、
直接会社側と接触したのは今回が初めてでした。

イメージ通り、社長はきっちりとした真面目な方という印象ですが、
いわゆる頭が切れるタイプではないので(すみません、失礼ですが率直な印象です)、
何か画期的なサプライズが生じる可能性はないように感じました。

私はサプライズは求めていませんから、
実直な経営をこれからも続けて欲しいと思います。

ただ、1点だけ気になったのは、中期経営計画を修正しないとした点です。

現中期計画は、次期(17年12月期)を最終年度としており、
M&Aを織り込んだものとなっていますが、
前期にM&Aに失敗したこともあり、
少なくてもこの部分は下方修正されるものと認識しています。
しかし、M&Aを除いた部分では十分達成可能という説明で、
中期経営計画の見直しは考えていないそうですが、
私はこの部分は素直に修正してリスタートを切って欲しいと思いました。

しかも以前にIR担当に確認した際には、
中計修正を示唆していましたので、その部分で矛盾にもなります。

中計の修正要否の判断だけでなく、
この方針が一転二転する
(実際には一貫していて私のミスリードなのかもしれませんが)のは、
少し不安を覚えました。
本来見直さなければならない数値を、
心意気とか意気込みとかで頑張り過ぎても、
身の丈の結果しか生まれませんから、
後々苦しくなるだけだと思います。
開示する資料は目標ではなくコミットメントだと認識しています。

今期の業績予想も以前IRに照会した際に、
かなり保守的なものという説明を受けて、
私もある程度それを真に受けているところですが、
今日の中計修正不要の立場を見ていると、
慎重な判断をしないとならないなと感じました。


さて、総会の様子を少しレポート形式で記載します。
冗長となりますので、もし興味を持って頂ける方は、
「続きを読む」へお進みください。



久々に快晴となった青空に、
開花したばかりの桜の淡いピンクが、
初春の訪れを感じさせる少し冷え込んだ朝を迎えた首都圏。

いつもの満員電車も会社に行く時の
なんともいえない億劫さはそこにはなく、
ワクワク感で高揚した中で会場に向かいます。

会場である錦糸町は、
都心からは総武線で千葉方向に少し外れた場所にあり、
普段はなかなか降り立つことのない繁華街です。
駅に降り立つと、すぐに圧倒されるのは、
間近に迫るスカイツリー。
迫力満点で晴天の中に力強く伸びるそのタワーに、
少し足を止めて見上げていると
それだけで会社を休んだ特別な平日であることを自覚出来ます。
なんだったら、このままスカイツリーへ向けてお散歩し、
ランチは浅草辺りまで足を延ばして天丼か洋食か辺りを頂いて、
そこから隅田川の水上バスにでも乗って東京湾をクルーズするのも悪くないな、
なんて妄想をしてみたりします。

しかし、本来の目的である株主総会に出席するという現実にすぐに立ち返り、
会場のホテルへと吸い込まれていくことになります。
電車遅延が最近多いこともあり、かなり余裕を持って到着したために、
ホテルのソファーで召集通知書と自分の作成している銘柄分析シート、
更に会社の開示資料を再読して質問すべきことを書き殴っておきます。
普段からそれなりに問題意識を持って銘柄と向き合っていますので、
質問事項は次から次へと出てきます。
当然すべては質問出来ませんから、
優先順位を決めて整理をしていると実は知りたいことはシンプルだったりしてくるわけです。

ファシリテーションスキルとして発散をさせて、そこから収束をさせることで、
観点の漏れやメンバーの納得感を得られやすいわけですが、
一人で思考するプロセスにおいても同じなのかもしれません。

重箱の隅をつついて、
細かな議論を通して論点を洗い出すためにとにかく一度発散をさせた上で、
そこから本質的なコトへ収束をかけていくわけですからね。

私のような低スキルの初心者でも、資料を読み進めていくことで、
的を得たいい質問ではないかもしれませんが、
それなりに聞きたいことは整理されていきます。

そんなメモを携えて、受付が開始されたので、
それを済ませて会場入りします。
ちなみに受付では通し番号の振られた出席票を頂きます。
飲み物もお土産もありません。
私は期待などしていないのでよいですが、
もしそれが主目的であれば同社の総会に行っても何ももらえないので、
無駄足になると思います。

会場にはスーツを着た社員が一列に整然と並んで、
元気な挨拶と共に迎えられます。
もちろん、丸和運輸機関のような元気さはないですが、
普通にしっかりした対応でよいのではないでしょうか。
こういうところで元気がないとちょっと心配になりますからね。
そういう肌感覚を知れるだけでも私は会社を身近に感じられるので、
よい機会だと捉えています。

最前列に陣取って開始の時を待ちます。

しばらくすると、社長以下の役員が登壇して席に着くと、
いよいよ総会が始まります。

召集通知書によると、事業の報告と決議の2部構成とあり、
早速事業報告から始まるのかなと思っていましたが、
社長が議長と努める旨の宣言の後、
報告事項の前に、M&Aで失敗して減損処理に至り赤字となった件について、
社長から個別に説明がありました。
基本的には事の経緯の詳細と無配となったこと、決算遅延で迷惑をかけたことなど、
一切の謝罪が主でした。

自分の口できちんとその件を説明するのは説明責任として当然なのですが、
経緯も含めて改めて説明を受けて、私としては反省すべき点は次にきちんと活かすという前提で、
チャレンジして失敗したことはやむ得ないものと理解しているので、
特に当件については気にしていません。

その後、数値面、定性面ではアニメーションを使ったスライドでの説明が入り、
ここでは特に新たな発見はありません。


決議事項もありきたりのものなので、
特に議論が必要なものも真意を確認すべきこともありませんので、
スルーと聞き流していました。

そして株主からの一括質問の時間です。
早速私は挙手をして一番手です。
1人2問までとあるので、
とりあえず優先順位をつけたものから聞き、
途中、他の方の質問もありましたが、
他に質問されたい方もおられないようでしたので、
再度追加の質問をさせて頂きました。

他の方の質問も含めて以下のようなやり取りがありました。
(私の主観に基づく解釈で記載していますのでご了承ください)



 人件費の高騰が経営課題と認識しているが、
 その対策や今後の見通しについてはどのように考えているか


 従来は契約社員主体で人材確保を進めてオペレーションしてきたものの、
 人材が集まらずその後の育成を考えてもマイナスの要素が顕在化してきている状況のため、
 SBSロジコムの地域支社において正社員として人材確保を進めている。
 人件費は必要な人材を確保する観点で必要な経費であるともいえ、
 正社員化を進めノウハウや経験を蓄積していくことで、
 費用対効果メリットがあるようにマネジメントしていきたい。
 またアルバイト要員も独自の日払い制度を導入して以来、
 約3倍程度の人材確保が進んでおり効果が出ている。

→コストコントロールの観点を質問したかったのですが、
 回答内容を見るとその費用の上昇は労働市場環境からやむ得ず、
 むしろ人材を確保すること自体にまず主力を置いている印象で、
 今後も人件費のコストマネジメントには苦労しそうだなという印象です。



 顧客への値上げ戦略は前期に一定の効果があったものと認識しているが、
 今後更なる収益の成長を図る上でどのような戦略を描いているのか。
 値上げはまだやれる余地があるものなのか、他の方法を模索するのか。


 顧客への値上げは前期に実施していることで一定の効果もあり、
 更なる値上げをお願いする環境にはないと認識している。
 このため、今後は自社内の生産性向上へも注力していきたいと考えている。
 直近で取り組んでいるのは、車の動態管理をより精緻に行い、
 空き稼働(車や人)を可視化して運用することで、
 すき間を活用したオペレーションの実現に向けて、
 現在、子会社の一部領域で実証実験を行っている。
 このような生産性向上を通して今後の収益力を向上させていきたい。


→リソースの配分を可視化してより戦略的な配置が出来るようにという取り組みは
 とてもいいのですが、やはり少し遅れている印象があります。
 トランコムはいち早くこのIT化を進めてそのマッチングの仕組みが強みですが、
 現時点で実証実験というのはやはり遅れを感じます。
 ただ、違った見方をすれば、そういう取組みによって、
 まだ生産性向上の余地があるという見方も出来て、
 それが今後の収益改善を期待できる種のひとつにはなるのかもしれません。
 こういう取組みはぜひ大々的に開示して、
 かつKPIとしてどれだけの効率化が図られたかを予実管理して、
 実績を積み上げていってもらいたいですね。



 現在の株価水準についてPER8倍であるが、
 東証1部平均の15倍と比較しても評価が低い状況にあるが、
 現状に対する認識としてどのように捉えているか。
 また価値向上に向けた取組みをどのように進めていこうとしているか。
 一例として株主優待制度の新設などを行うつもりはないのか。


 現状の株価水準は自社におけるポテンシャルを鑑みてみると、
 市場からは残念ながら低い評価となっている点は課題と捉えている。
 このため、自社株式の価値向上に向けた取組みを行っている必要性は強く認識しているものの、
 小手先の手法ではなく、本筋である毎期成長を続けて、
 好業績を続けていることしかないと捉えている。
 成長を続け好業績を続けていけば、いつか市場はきちんと評価してもらえると信じて、
 日々の経営に当たりたいと考えている。
 なお、普及活動としては他に日経新聞への広告出稿なども行い、
 同社の存在価値のアピールは行っている。
 また株主優待制度については、過去に検討した経緯があるものの、
 B2Bのビジネスモデルを有する中で、
 なかなか優待としてお出しする上で適当な商品がないということもあり、
 現状、優待新設についてはやるつもりがない。

→いまどき、クオカードとか図書券とかお米券とかあるんですが、
 自社製品がないからやらないというのもちょっと偏っているかなとは思います。
 ただ、一方で優待を小手先の人気取り手法とまでは言いませんが、
 そういうものに頼らずに業績の成長を続けることが唯一だという思想には、
 私は概ね同意ですので、有言実行で頑張ってほしいです。
 ただ、確かに経営は株価を意識せず、
 自社の業績成長を命題に取り組んでいくべきなのでしょうが、
 そうはいっても今のご時世、自社の魅力を訴求していくことも、
 企業価値向上に資するという面では経営課題でもあると思うので、
 少しは配慮をしつつ経営して欲しいとは思いました。



 インド子会社の減損に係る件で株価も半分になり大変憤りを感じている。
 買収の際になぜ気が付けなかったのか、また状況を認識した時点での適示開示が遅すぎるのではないか。
 ディスクローズの観点で適示適切な開示という点において少し認識が甘いのではないか。
 決算遅延時も特に何事もないかのように振る舞い、
 実は一部の株主に逃げ場を与えたとすら疑ってしまう醜さだ。
 今回の一連の開示について認識が甘かったという自覚はあるのか。


 まず買収の際のデューデリは十分慎重に行い、
 当時の判断は誤っていなかったと認識している。
 買収後も昨年10月までは回収も遅滞なく
 増収増益を続けていて適正と判断していた。
 しかし10月に入り急遽回収が遅延し始めた傾向がみられ、
 ここでも引当金を計上して前期決算を済ませることも出来たものの、
 徹底的に精査を行い事実関係を確認することに重きを置いて、
 調査会社も活用して徹底調査を行った結果、
 リスクの高い地域での3国間取引が発覚し、
 その実態を把握したのは1月中旬位であった。
 この時点で引当金を積んで決算をすることも出来たが、
 慎重に経営判断をするプロセスで撤退を決断したものである。
 このプロセスではインサイダー情報ということもあり、
 事実関係をきちんと整理するまでは開示が出来ないし、すべきではないと判断したものであり、
 このような事態を招いた点は申し訳ないと認識しているものの、
 開示時期の適切性については諸々の判断の中で最善を尽くしたものと考えており、
 ご理解頂きたい。


→この後も更に何度も同じようなことを吠えてらっしゃいました。
 株価が上場来高値の1200円から半額になってしまったことを
 相当気に病んでいるのか、今回の失敗に至った開示プロセスに相当お怒りでした。
 私は個人的に結果は残念な結果となりましたが、
 開示時期についても問題ではないと思いますし、
 引当金を積んでやり過ごすにではなく、徹底調査をして、迅速な撤退判断を出来たことは、
 むしろポジティブなことと捉えています。



 インド子会社の減損に係る件で、株主としては無配という責任を負うわけであるが、
 経営としてはどのような責任を取るのか。
 またデューデリは適正だったとのことだが、その試算をムリハマダ法律事務所(?)に依頼していたようだが、
 一法律事務所でインドの会社のデューデリが適正に行うことが出来るのか。


 まず無配となった点は改めて謝罪する。
 経営の責任については、きちんと整理をした上で、然るべき対処を行うつもりである。
 現在、継続して状況の分析や今後の再発防止なども議論している最中であるため、
 これに一定の整理がついた段階で責任も明確にする。
 ムリハマダ法律事務所は海外にも支店を有し、特にインドのケイタイ(大手らしい?)とも
 連携実績がある中で依頼をした。
 当時の状況からは適正に判断していたものと認識しているものの、
 今回の件を事前に予見出来なかったのは申し訳ない。

→個人的には今回の件は再発防止や今後の糧として高い授業料を払ったものと理解しているので、
 確かに責任論とかは大事かもしれませんが、
 そればかりにフォーカスを当ててしまうと、新たなチャレンジが出来なくなる弊害もあります。
 もちろんだからといってなんでもやっていいわけではありませんが、
 引き締めつつチャレンジは続けて欲しいと思います。



 中計はM&Aを考慮した部分も積み上げられており、自己資本比率も含めて
 修正が必要と認識しているがどうか。


 中計はM&Aを除いた部分としては十分達成しうると考えており、
 かつ利益面でも射程圏と考えている。
 但し、M&Aを含んだ売上ベースのみちょっと厳しい実感だが、
 現時点で修正はしないつもりである。

→これは私が追加で質問しましたが、前の方の質問で適示開示のタイミングの話があったので、
 便乗して、もし修正が必要であれば(というか必要だろうから)早く決めて開示してね、
 という趣旨だったのですが、
 まさかの修正はしないという回答に驚きました。
 まだ試算がきちんと出来ていませんが、
 本当に利益で達成しうるのでしょうか・・・。



途中、適示開示の件で吠えていた株主さんとの応対では
やや気の毒になるくらい険悪な空気になりつつも、
真摯に社長は対応されよかったのではないでしょうか。

一通りの質問を終えてあとは出来レースの決議を拍手で行った上で閉会となりました。


全体として印象は特に変わらず、まじめにやっている会社なのだということがわかりました。
一方で、例えばコストコントロールの件も何か大きく夢のあるような話があるわけでもなく、
効率化などで粛々と頑張っていきますということでした。
株主価値向上という点でも優待は明確に否定されていますし、
それよりどっしりと構えて業績をきちんと上げるという
真面目にコツコツという原点のような会社なのでしょう。


目標株価も含めて投資判断は特に変えませんが、
暴落した時から見るとそれなりに戻っていることと、
その暴落局面で少し買い増ししている分がありウエイトも増えていること、
12月無配の穴埋め配当が週明け権利確定で無駄な権利落ちリスクに晒したくないこと、
これらを勘案して少しポジションを落とすこととしました。

株主総会を通してもう少し積極的、前向きなことが出れば、
もう少し強気に今のウエイトを維持してもよかったのですが、
そこまでの力強い自信を新たに得たわけでもなく、
比率のバランスから調整しました。


以上、とくに特記すべきことのなかった株主総会でしたが、
こういう機会はとても貴重な機会ですので、
今後も仕事に都合をつけて積極的に参加していきたいと思います。



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コメント
この記事へのコメント
まるのん先生、こんばんは。

レポート大変参考になりました!

中計については、もし、修正する必要があるならば、早めに修正してほしいですね。

個々人の仕事でも、失敗を隠したり、先送りしてもほぼ100%良いことはなく、不良債権問題や東芝の歴史を見ても明らかです。

株主優待については、先生とは反対に、硬派な、本業で頑張る意気込みが見え好感が持てました。

一つ、教えてください。まるのん先生ほどの方が、頭がキレルと感じる経営者はどなたか興味あります!!

少し異なりますが、私が頭良いと感じたところでは、賛否両論ありますが、竹中平蔵さん、全く経済や株式と異なり私の趣味ですが(笑)、羽生さん(将棋)は次元が違う頭のよさです。

明日からお互いにお仕事頑張りましょう!

2016/03/27(日) 21:13 | URL | ゆったり #-[ 編集]
>ゆったりさん
こんにちは、ゆったりさん。
コメントを頂きましてありがとうございます。
また、回答が遅れまして失礼いたしました。

中計は私は素直に修正した方がよいと思いますが、
最近は安易に中計を修正したくないバイアスでもあるのでしょうかね。
確かにコーポレートガバナンスの観点からも、
信頼性が損なわれますが、
きちんと説明して最新化しない事の方が問題ですからね。
もちろん経営として無理なストレッチなくいけると考えているのであれば、
それはそれでいいと思いますが。

優待については、私も本業で頑張り、
内部留保して成長に使ってもらう方が個人的には歓迎です。
ですので、はっきりいって優待など二の次だと考えています。
但し、市場では最近、優待がないことが評価を下げているような動きもあるように感じ、
優待の有無というより、株主に対するケアの意識を知りたかったです。
そのため、有無の結果より、その回答プロセスを参考にしたいと考えています。

竹中平蔵さんは私は恥ずかしながら当時の経済政策について、
完全に理解を出来ておらず、その優秀さをあまり語れません、すみません。

最近の経営者で頭が良いなと思った方は、
保有銘柄の中で日本管理センターという銘柄がありますが、
その社長の武藤さんは素晴らしい経営者だと感じています。

その他有名なところでは、
ありきたりですがソフトバンクの孫さんにも学ぶことが多いと感じています。

2016/03/29(火) 02:48 | URL | まるのん #-[ 編集]
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