投資方針に忠実に退屈な投資で資産形成

【決算精査】 3910_エムケイシステム(17年3月期_1Q決算)

銘柄分析シート


1.サマリ
総合評価:「3」 (☆☆★★★)
※総合評価は5がポジティブ、3がニュートラル(想定通り)、1がネガティブの5段階レーティング


夏休み期間で家族との時間を優先しており、
精査記事のUPが遅れ、かつ記事も簡略化しています。

今回の決算は数値面では人件費の増加などの影響か、
特に販管費の増加により営業利益以下で伸長率が低く推移しています。
従って短信1ページ目の印象はあまりよいものでもなく、
実際、この販管費増加が今後どう推移するかが気掛かりといえばそうですが、
実際、売上の伸長が目覚ましく
特にストック部分の伸長が大きいこともあり、
想定通りに進行していると判断しています。

定性情報としてもAPI連携を活用した同社主力製品と電子政府基盤との連携を実現するなど、
商品価値向上に継続的に努めている姿も確認出来ます。
また、セミナーによる販促も活況の様子もあります。
一方で一部製品の販売停止という文言もありますので、
こちらは少し念頭に置いておく必要があるかもしれませんが、
元々、同社には、製品販売より月額課金によるストック部分の伸長を期待しているので、
大きな問題とは認識していません。

従って、総合評価は「3」(想定通り)となります。



2.定量数値の確認


(1)売上の推移

売上の伸長は素晴らしいものです。
その中でも、ストック部分の売り上げは33%の増収となっています。
製品販売に係るフローは落ち込んでいますが、
元々ストックの比率が圧倒的に大きい(9割程度)ですし、
ストックに注目しているので、総じて堅調だと認識しています。
但し、ではポジティブかというと、
会社上期計画に対する進捗率は概ね50%弱となっており、
計画線ではないかと考えています。

3910_売上高推移(17年3月期_1Q)




(2)利益の推移

粗利率は前期1Qが70.2%に対して、今期1Qは70.9%となり、
ほぼ横ばいです。
一方で販管費率は38.8%→43.9%と大きく上昇しており、
これが中途採用の人件費増加の他、どのような要因によるものかは、
少し気にはなります。
人件費の増加は今後より収益化されていけるのか、
またその他の要因が惰性で支出継続となると、
収益性が低下することになります。
ただ、それでも営業利益率は27.0%(前期31.5%)ですから、
十分高い水準にあります。
こちらは上期予想に対する進捗率は46.4%ということで、
50%にやや足りないのでもしかするとやや上期予想未達かもしれませんが、
まぁ誤差の範囲でしょう。


◆営業利益推移
3910_営業利益推移(17年3月期_1Q)



◆純利益推移
3910_純利益推移(17年3月期_1Q)





(3)利益の状況と今後の見通し

1Qの結果を踏まえて上期予想の実現可否を皮算用したいと思います。
(長期スパンで見るのであればほとんど無意味であるわけですがね・・・)

<今期2Q単会社予想>
売上 289百万円
営業利益 82百万円(28.4%)
純利益 51百万円(17.6%)

<前期2Q単実績>
売上 208百万円
営業利益 66百万円(31.8%)
純利益 42百万円(20.4%)


利益率は前期より落ちることになりますが、
まぁ妥当なところだと思います。
一方、売上については、39%程度の伸長が必要なので、
ややハードルが高い印象です。
当1Q対比で見れば9%程度の増加ですので、
全く無理ではないとは思いますが、
まぁ概ね近しい値になるのではないでしょうかね。

いずれにせよ、何か判断を変える必要性は感じません。







※2016/5/22 AM1:00 追記(続きを読む欄)

3910 エムケイシステム 東証JASDAQ 【情報通信】


社会保険労務士の一連の手続きに関するオペレーションを
システム化した上で、それをクラウドサービスとして提供しています。

社労士業務というニッチな部分で、
クラウド型で高い収益率を維持して事業を行っています。

ここ3年程度で損益分岐点を超えてきて、
まぁタイミングよく昨年上場してきた直近上場銘柄です。

どうも私は直近IPO銘柄が好きなようです。
もちろん上場前の情報が不足しがちで、それだけリスクも高いですが、
IPO間近でわいわいやっている投機が一区切りついた
長い視点でのセカンダリ投資は自分の眼を鍛えるにもよく、
この投資ブログの目的でもある練習記録にもよい題材です。

というわけで、儲かるかはわかりませんが、
分析を軽く纏めておきたいと思います。


まずは分析シートは以下に纏めています。
(PDFファイル直リンクとなっています)

 銘柄分析シート 3910 エムケイシステム




1.事業内容

決算説明資料(PDF) 内に事業内容のペーパーが入っています。

3910_エムケイシステム(事業内容)


社会保険労務士は給与計算などの日常業務に加えて、
社会保険などの各種保険に関する業務全般を行う士業を生業にしています。

証券リサーチセンターによるアナリストレポート内に、
社労士推移がありましたが、ゆっくりと増加傾向にあるようです。

社労士推移


社労士が扱う業務は、会社として一人でも従業員を雇用すれば、
必ずそこに申請手続きの事務が生じます。
そしてそれは雇用期間中も給与計算処理や就業管理などが継続し、
退職時には各種保険の申請手続きと、
「人」の雇用におけるライフサイクルで欠かせない存在となります。

そして日本の事業所のうちほとんどが中小企業と言っていいわけですが、
そのひとつひとつの事業所には必ず雇用があり、
この業務は切っても切れません。

私は社労士業務は全くの素人ですが、
仮に不況が来ても必ずその業務は継続します。
そして不謹慎かもしれませんが、本格的な不況が訪れると、
解雇などによる退職に伴う各種手続きでより忙しくなるかもしれません。

そして、一連の管理や申請業務において、
社労士は当たり前ですが手で申請書を書いて・・・などとやっていると日が暮れてしまいます。

そこで、専門のソフトのお出ましなわけです。

企業の「金」を司る会計士や税理士向けが使う会計ソフトは
多くの専業ベンダーから○○奉行だとかなんだとかで色々ありますね(笑)。

しかし、企業の「人」に纏わる社労士が使う業務ソフトは、
調べてみると三菱系のIT企業など限られた企業からしかリリースされていないうえに、
圧倒的なシャアを取っているところもなく、
かつ中小企業が圧倒的に多い中で、
高いパッケージ商品がずっと君臨し続けることは想定しにくく、
だからこそ、エムケイシステムの少額で気軽に始められる
クラウド型サービスが刺さるのだと思います。

なお、このクラウドサービスに付随して
オプションサービスとして初期設定の対応やハードの提供サービスも提供しています。
更に、最近実はシステム対応はほぼ要らない方向で各社対応中と言われている、
マイナンバー関連もあります。
もちろんこれはあくまで付随的なものと位置付けて私は認識しています。




2.成長性について

同社の成長性はトップラインの向上に依拠するでしょう。

同社が注目している経常利益率で既に30%を超えており、
短信に記載されている当面の目標として、
経常利益率30%の維持が掲げられています。
つまり、これ以上利益率は向上しないことを示唆しています。

となると、今後の成長は売上高の成長率にほぼ収斂するものと理解しています。

同社の場合、多額の営業コストをかけるというより、
セミナーなどを開催することでそれをトリガに商談が決まっていくようなスタイルのようです。
また人材投資やサポート要員の拡充が急務で、
この辺りを踏まえて成長率をざっくり見極めていきます。

社労士全体の推移は毎期数%増えています。
また同社の社労士事務所のシェアは7%程度となっており、
まだ拡大余地は十分である一方で、
セミナーなどの集客にも限度があり、
かつ、実際に導入サポート要員のリソースにも限度があるため、
過去のトレンドを見ると10%台前半の増がいいところだと思います。

今後システム投資も継続しており、
特に言語コンバートや多言語化対応などの対応を通して、
償却費もそれなりの額の計上が必要になると思います。

以上のことを総合的に考えるとCAGR12%程度かなと思いましたが、
過去の実績を踏まえてみてももう少し楽観視してみてもいいかなと思います。
CAGR14%程度でみておこうと思います。
(最後がかなりいい加減ですが(笑))

なぜ上記のように考えたかですが、
同社のもうひとつの成長戦略である一般企業向けの開拓です。
社労士事務所には当然社労士がおり、
そこで社労士業務がやられています。

一方で日常の就業管理や給与計算は一般企業の人事部や総務部といったところで、
社内労務士が先導して対応しているわけですが、
この部分への開拓はまだ余地がありそうです。
そしてこちらの開拓にも本格化していくとしていますから、
こちらのセグメントでの成長も多少は織り込んでもいいだろうということで、
2%上乗せしました。

社労士事務所などのシェア率を見ても、まだまだ拡大余地がある点と、
年商5億を超える一般企業は約21万社あり、
そのどの企業でも労務管理は必ず存在しているはずですが、
同社のサービスが提供されているのは、実に39社しかないようです。

3910_シャア状況



多くの中小零細企業は、各自がタイムスタンプを押して、
パートの方がそれを月次で手集計して・・・ということが日常だと思いますが、
それをシステム化して、
かつ月額数万円で全ての業務を網羅してくれるのであれば、と
徐々にスイッチングが進んでも不思議ではないと思うのですが、さてどうでしょうか。

最後に同社をマイナンバー銘柄とテーマ性を持ちあげられることもあるようですが、
私ははっきりいって全く期待していません(笑)。
マイナンバーの取得代行サービスも不調に終わったようですし、
一種の営業のきっかけを作ってくれる面では良かったようですが、
マイナンバーの取り扱いが業務拡大に直結するとは思えませんし、
そうなったとしても一過性の特需のように感じます。
ですので、変なテーマ性で持ち上げてわいわいやるならもっと他でやってもらいたいです(笑)。

 
3.株価水準について

 現在の株価は1,196円です。
(5月18日終値で表記しています)

 時価総額:31.7億
 PER(16.3期実績):15.4倍
 PER(17.3期会社予想):13.9倍
 PER(17.3期四季報予想):14.4倍
 PBR:3.4倍
 ROE(16.3期実績):24.7%
 DOE:4.8%


成長率14%で予想PER14倍となるとPEGレシオはちょうど1倍近傍です。
この成長率が正しいとすると現時点では妥当な水準かもしれません。



4.リスク要因

いくつか気になる点があります。
開発の状況、開発要員の問題、一般企業へのアプローチ手法などです。
というわけで、IRとやり取りしていますので、一部、ご紹介します。
(主観的な判断が入っていますのでその前提でお読み下さい)


まるのん
次世代ASP製品の開発状況が前期末に完了する予定が、
今期末予定に変更されており遅延している印象ですが、
なぜ遅延しているのでしょうか。
またこの遅延によりよりコストを要していると思われますが、
業績予想への織り込みはされていますか。

IR
マイナンバー関連サービスの開発に開発要員を優先投下したためです。
今期に想定出来る範囲で必要なコストは計上しています。

まるのん
開発要員は各種商品の魅力度向上のためにも不可欠と理解しています。
一方で二戸という郊外でも採用活動もされているようですが、
優秀な人材はきちんと確保出来ているのでしょうか。

IR
大阪本社と二戸の両拠点で多様なチャネルを確立して、
人材獲得を行っている。今後もより優秀な人材獲得のために努力していく。

まるのん
利益の成長性について利益率目標は当面現状水準維持と掲げられていることもあり、
売上高の成長に従うと理科いしていますが、その理解でよいのでしょうか。

IR
同社のビジネスモデルは直接原価が少ないASP型の売上増で更に利益率は向上します。
一方で、人への投資、サポート体制の拡充、セキュリティ対策などの投資も必要であり、
こちらも継続的に行っている予定であることもあり、
これらを踏まえて利益率30%を維持という目標としています。
このため、利益率向上による利益成長というより、
売上の成長と同トレンドになるという指摘はその通りと認識しています。

まるのん
一般企業向けの顧客獲得について、
既に既存事業者は人事、労務業務が存在してそれで回っている中で、
どのように参入余地を見出していくのでしょうか。

IR
一般企業では給与計算を含めた人事システムは拡充されているものの、
申請業務は非システム化に留まっている点は訴求点があると考えています。
直近ではAPI連携が既存の人事システムと同社が提供しているシステムとの、
連携が実現したことによる優位性に関してのレポートもPR情報として開示しています。

まるのん
競合他社との関係性、特に同社の優位性についてはどのように分析されていますか。
その中で今後はどの程度の新規顧客の積み上げを期待していますか。

IR
社労士マーケットでは、申請システムの視点が弱かったり、
クラウド型ではないことでイニシャルが高く導入が困難であることに対して、
同社の提供スキームに優位性があると考えています。
また付随的ではありますが、マイナンバーの対応が迅速な点も優位性かもしれません。
一般企業においても人事関連システムの導入は競合商品もある中で、
申請システムを提供している競合がそもそも少ない点も優位であると考えています。
新規獲得のペースは、従来と同水準を異時出来るように営業活動頑張ります。

まるのん
顧客層にエリア的な偏在は認められますか。

IR
特に認められず、社労士事務所が多い関東県圏が多いかもしれない。
一般企業はそもそも取引そのものが少ないので、エリアを議論する段階でもない。

まるのん
本則市場への意欲と優待新設の検討状況はいかがですか。

IR
本則市場への市場変更は、公表できる具体的な予定はありません。
株主優待は検討はしているが具体的な予定はない。



冒頭の質問で、開発要員の獲得辺りが最大リスクと見ています。
開発の遅延による影響や、システムを使う際のサポート要員について、
不足感が台頭してくると商品の魅力度低下を招くだけでなく、
顧客の離反(新規の伸び鈍化も含めて)が起こって、負のスパイラルになります。


今の所、目立った競合もないために、
直ちに流出するリスクはそこまで高くないとは思いますが、
早々に安定した開発体制、サポート体制の構築が必要と思います。

このことを認識してかどうかわかりませんが、
今回の決算補足説明の中でサポ―ト等の拡充が+αとして追記されました。

2017年3月期方針





5.目標株価について
目標株価ですが、
まずは19.3期EPSはCAGR14%程度とみて115と予想します。

評価PERですが、私は20倍で見積もりました。
20倍で見積もるには成長性が控え目ですし、
マザーズ銘柄のいわゆる高成長銘柄と比べてれば、
見劣りすることは否めません。
但し、事業内容が囲い込みに比較的強いこととや高い利益率が継続していることも踏まえ、
一定の事業優位性は認められますし、
おまけかもしれませんが、将来的に本則市場への昇格により評価も上がることが期待出来ます。

以上から目標株価は2,300円と算出されます。
(これでも時価総額は60億程度です)

現状の株価からの上値余地は92%で約2倍弱になる計算になります。

なお、仮にCAGR12%で見た場合19年3月期EPSは110位です。
この場合目標株価は2,200円ですが、まぁ2,300円としておきます。

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