投資方針に忠実に退屈な投資で資産形成

【決算精査】7164_全国保証(18年3月期_1Q決算)

決算説明資料(PDF)



1.サマリ
総合評価:「3」 (☆☆★★★)
※総合評価は5がポジティブ、3がニュートラル(想定通り)、1がネガティブの5段階レーティング


決算説明資料に記載の通り、
総じて順調な事業が継続しているようです。

将来の営業収益のストックとなる保証債務残高も堅調でありながら、
コストとなる代位弁済が低位に推移することで、
堅調な定量結果が出ています。

一方で1Q足元のでの新規保証実行件数が減少に転じており、
業績予想の前提では当指標は前期比増となることから、
これが一時的なものと判断するかどうかはなど注視が必要かと思います。

また、BSで、「金銭の信託」の解約があり、
その分で「有価証券」や「現金」が増加しています。
より安定的な運用にということなのか、
今の市況を考えてより安全サイドにということなのでしょうか。
どこまでも安全重視なオペレーションだと感じます。

代位弁済が低位となっており、
全般的に会社計画より強く推移しているものと思いますが、
現時点では特段驚くようなものでもないため、
総合評価としては「3」想定通りとなります。


なお、同社については、
決算説明資料のみで十分状況把握が可能であることから、
銘柄分析シートは作成していません。



2.定量数値の確認


(1)営業収益の推移

営業収益は保証債務の伸長に伴い、
順調に伸長しています。
特に問題ありません。


(2)利益の推移

営業利益は前期の強い伸長から
更に2桁成長となっています。
売上が伸長しているにも関わらず、
与信関連費用が▲25%と大幅減となっていますからね。

純利益では前期に有価証券評価損の
特別損失の計上があったため、
相対的に伸長率が大きくなっています。


(3)上期予想について

1Q実績と上期予想の差額から、
2Q単の計画を逆算します。

営業収益(売上) 7,890M(1Q比+8.3%)
営業利益 5,525M(1Q比+7.0%)

利益率がほぼ1Q並で営業収益のみが伸長するという見込みです。
新規保証受付件数(実行件数の先行指標)が1Qできちんと伸びていますので、
多少ショートするかもしれませんが、
利益面では概ね計画線という判断でよいかと考えています。



(4)セグメントの状況

同社は単一セグメントであるため、
特に記載することはありません。


3.IR照会

営業収益の源である、
新規保証実行件数が減少に転じています。
業績予想では増加見通しであるため、
これが会社計画通りであるのか確認したいと思い、
IR照会を実施しました。

私の主観に基づきメモを残しておきます。
なお、一部やり取りで記載残すべきでないことは
割愛しています。


まるのん
新規保証実行件数が減少しているが、
どのように捉えているか。

IR
前期の同時期はマイナス金利などの影響で、
借換需要が大きく膨らむなどして
実行件数の伸長が大きかったこともあり、
元々会社計画においても1Qでは減少を見込んでいた。
会社計画通りであると共に、
その先行指標である受付件数は堅調であることからも、
今後も計画通り推移し、通期予想の前提通りに
進捗していくものと考えている。

まるのん
BSで金銭の信託が減少しているが、
これはどのような理解をすればよいか。

IR
金銭の信託は、当社の保証料を安全性を十分考慮しつつ、
その一部を委託運用をしているが、
今回それを手仕舞いする判断をした。
そのために減少しており、1Q末ではまだ残高があるが、
今後完全にクローズする見込みである。
その分、より安全性の高い、社債や現金化している。

まるのん
保証料の利回りが低下している点は
収益性からネガティブと捉えている一方で、
安全性を最重視するという命題もあり難しい判断と認識している。
今の市況などをみるに手仕舞いしたという判断は尊重したい。

IR
悩ましい状況でありながらも、
何より保証料は今後の収益になる源泉であり、
それを毀損するようなことは絶対にあってはならないため、
このような判断を行った。


まるのん
代位弁済が低位に推移し、1Qでは見通しより強い推移と理解している。
そのような理解でよいか。

IR
そのような理解で相違ない。
代位弁済は保証債務の総量が増えており、
同じ発生率であれば増加するために
計画もロジカルに算出すると見通しは増加ということになる。
しかし、実態は雇用が強いなどの状況のため、
引き続き発生率は低位でコストが低減できている。
今後も代位弁済の発生率があがり、
コスト増になる要素は認識していないが、
引き続き注視していきたい。


いつもやり取りさせて頂いているIR担当の方で、
とても明確でこちらの意図を汲んでコミュニケーションが取れます。
IRが優秀だと嬉しいですね。
まぁそういう優秀な方を配置しているのだと思いますし、
そういう会社は応援したいと思わされますね。



4.株価推移

決算を受けて、一時5000円台を付けた後、
華麗な寄り天で一気に決算前の水準を割り込んでいっていますね。
確かに代位弁済の低減でやや強い数値ではあるものの、
そこまで驚く内容でないことと、
既に株価にも織り込まれていたとも思うので、
私は完全に傍観者となりました。
PERで15-16倍程度でほぼ妥当な水準ではないでしょうかね。




~なお、当記事は私の主観に基づき記載されていますので、
投資判断をされる際にはご自身の尺度で十分検討を行って頂くようお願いします。~



2017年投資方針に従い、
改めて銘柄の定点観測を実施します。


◆7164 全国保証

【提携拡大から既存深掘り】
JAを中心とした提携拡大から都銀を中心とした
大手既存顧客からの取扱量増加のための深堀りにより、
保証債務の積み上げを狙う。
行内シェアも拡大余地も大きく緩やかな成長を期待。

【堅実な展望】
直近の外部環境の好転から代位弁済低減など
追い風が吹く中にあっても堅実な経営に終始している印象。
本来はもう少し還元余地があるとみるが慎重な対応は、
やはり信金派生の堅実な会社という印象。


【総合評価】 ・・・「A」
堅実さが全面に出ており安定的かつ安全性に配慮して、
ニッチで実質的な寡占市場で勝負している。
決して大きくイノベーションが起こる成長こそないものの、
適切な還元と今後の提携深掘りをメインシナリオとして
金融機関との関係性を構築することで着実に成長していけると判断。
やや割安性が薄まっていることからB評価に近いAを付与。


 【成長性】 ・・・「B」
  <成長シナリオ根拠> ・・・17pt/20pt
   ・都銀等大手提携先での行内シェア拡大
   ・審査事務全般の運用効率化
   ・新商品の開発(住宅ローンからの派生)、すぐにはないかな
   ・JA中心とした提携拡大 成長寄与度は限定的
  <想定CAGR> ・・・7pt/20pt
   ・CAGR8%
   ・過去実績は申し分なし
   ・費用の繰入戻入がなくなり真の実力ベースを想定して評価
  <テーマ性> ・・・ 7pt/10pt
   ・低金利(ローン利用の増加)
   ・金利上昇(銀行の住宅ローン取扱いのモチベーション維持)
   ・人口減少
   ・正規社員の低下(持ち家に対する需要低減?)
   ・連帯保証人がみつけにくい
   ・ビックデータ分析(審査ソリューション)

 【安定性】 ・・・「A」
  <スイッチングコスト> ・・・14pt/15pt
   ・実質的に民間では独占事業
   ・行内保証が競合
   ・保証リスクを行内だけに抱えたたくないモチベーションはある
  <不況耐性> ・・・7pt/10pt
   ・本格的な不況時に代位弁済が嵩むことで原価増の要素あり
   ・但し売上は保証債務残高によるストック性要素高い
   ・そもそも同社保証の審査基準は相当高い(らしい)
  <ストック性> ・・・9pt/10pt
   ・保証債務残高をローン期間割でのストック収入
   ・但し貸倒発生時は代位弁済となるためその点は留意
  <過去業績実績> ・・・7pt/10pt
   ・安定の成長基軸を継続
   ・但し戻入益があった影響もあるためやや保守的にみるべき
  <顧客層> ・・・4pt/5pt
   ・特定顧客依存なし
   ・金融機関という優良顧客(大手から中小まで幅広く)
   ・個人のローン利用時必須だが同社が顧客属性から厳しく選別

 【割安性】 ・・・「C」
  <PEGレシオ> ・・・6pt/20pt
   ・PEGレシオ1.8
   ・PERの絶対的水準からも特に割安感はない
  <目標株価GAP> ・・・10pt/20pt
   ・上昇余地50%弱でそこそこ

 【安全性】 ・・・「A」
  <営業CF推移> ・・・14pt/15pt
   ・営業CF+で安定的
   ・フリーCFも安定的
   <自己資本比率> ・・・13pt/15pt
   ・30%台 業態的に現金が圧倒的に多いため全く問題なし

 【還元性】 ・・・「A」
  <DOE> ・・・12pt/15pt
   ・DOE6%前後 財務バランスからもう少し欲しいが十分
  <資本政策> ・・・4pt/5pt
   ・ROE30%弱で優秀
  <IR活動> ・・・4pt/5pt
   ・決算説明資料・動画開示
   ・IR責任者の適切な対応
   ・IRフェアイベントブース出展
  <株主優待> ・・・5pt/5pt
   ・株主優待は魅力あり


【決算精査】7164_全国保証(16年3月期_4Q決算)

銘柄分析シート


1.サマリ
総合評価:「3」 (☆☆★★★)
※総合評価は5がポジティブ、3がニュートラル(想定通り)、1がネガティブの5段階レーティング

保証債務残高は中計を1年前倒しで10兆円の大台に乗せ、
順調な業績拡大を続けています。
前期の実績も売上(営業収益)から各利益まで全て計画を超過して着地しています。
四季報の独自予想よりも超過しています。
足元の業績は好調を維持していることを改めて確認出来ました。

一方で、今期予想は毎度のことですが弱いものとなりました。
ただ、今回の弱い予想は前期までの、
後で上振れ着地という出来レースとは違うと感じます。
元々同社の上振れの主要因は、過去の積み上げていた引当金が
代位弁済が想定より低く推移したことによる
戻入れもあり押し上げている面がありました。
しかし、この代位弁済の低下もそろそろ限度が見えていることと、
過去に積み上げていた引当金もいいところまで低下しており、
そろそろこの押上げ効果も限度が来ており
これからは、真の実力でゆっくりでも成長していくこととなります。

私は同社に対して8%の成長を期待しているものの、
もう少し控え目に見るべきかもしれないという点も、
前回の記事で言及していました。
このシナリオで見れば今期予想EPSは268.6を想定していたわけですが、
会社予想EPSは251.5ですので約6.4%の下振れです。

今期予想は前述の通り、これまでのような上ブレは期待出来ないと認識しつつも、
多少はバッファがあるものと認識しています。
ですので、前期実績からの5%増益程度と見て、今期予想独自EPSは262.7とします。

想定EPSは誤差の範囲であり、
かつ基本的には8%程度の成長シナリオは見立てを変えません。

以上からやや今期予想に力不足感と押上げ効果が剥落したことで、
一時的に株価にはネガティブに働くかもしれませんが、
想定しているファンダメンタルズは不変と認識しました。
このため、総合評価としては3(想定通り)としたいと思います。


IRへの問い合わせも含めて、
続きは冗長になりますので、 興味を持って頂ける方のみ、続きを読む にお進み下さいませ。

【決算精査】7164_全国保証(16年3月期_3Q決算)

銘柄分析シート


※ここでは営業収益を売上高と表記しています。

1.サマリ
総合評価:「3」 (☆☆★★★)
※総合評価は5がポジティブ、3がニュートラル(想定通り)、1がネガティブの5段階レーティング

保証債務残高や新規提携も進んでおり、
代位弁済が低位で推移しており、
全てにおいて変調はなく、結果、ストックビジネスの安定感でもって、
想定通りの業績を出してくれています。

特にこれ以上何か特記すべきことはありません。
総合評価は「3」の想定通りです。


2.定量数値の確認

増収増益決算となります。
特に利益面では2桁%の増益となっていて順調です。

7164_決算短信表紙(16年3月期_3Q)

私は同社の利益成長は8%を想定しており、
そこから目標株価を算出していますが、
今期はこれまで2桁%の利益成長が続いていますので、
個人的には足元の業績には満足しています。
ただ、あくまで足元の業績としてはということです。
この実績は代位弁済の低下など、外部要因による所も大きく、
実際の成長力はもう少し控えめに評価すべきだと思います。


(1)売上の推移

ストック型の象徴であるような安定的な推移となっています。
同社の売上は、保証債務残高の推移を見ていればOKですが、
決算補足説明資料(PDF)にも表記がありますが、
これは景況感や新規住宅指数なども兼ね合いがありますが、
提携先の金融機関等の拡大及び既存取引先の深堀りの効果です。
これは当面緩やかに拡大していく傾向と考えますので、
ストックの安定性が魅力で保有していますが、
その目的通りの結果を今回の決算でも出してくれています。

7164_全国保証(FY15_3Q)売上推移



(2)営業利益の推移

累計で見れば前期比で2桁%成長となっていますが、
3Q単計で見ると、前期比で+8%弱となっています。
1Q,2Qでは2桁%となっていましたが、
3Qでは少し前期比が低下していることになります。

一部会計基準を変えたことにより、
利益項目に影響があると短信で表記されていて、
この効果が上期にあったのかもしれません。
そういう意味では、8%成長シナリオを鑑みると、
この3Qはちょうどよい心地なのかもしれません。

7164_全国保証(FY15_3Q)営業利益推移



(3)純利益の推移
純利益の推移は営業利益の考察と同様です。
特記することはありません。

7164_全国保証(FY15_3Q)純利益推移




(4)利益の状況と今後の見通し

通期会社予想から、4Qでの単計の予想は以下の通りとなります。

 売上高  :11,889百万円
 営業利益 : 8,590百万円 (72.3%)
 当期純利益 : 6,079百万円 (51.1%)

前期の4Q単計の実績は以下の通りです。

 売上高  :11,989百万円
 営業利益 : 9,922百万円 (82.8%)
 当期純利益 : 6,495百万円 (54.2%)

前期比で見ると売上はほぼ横ばい、
営業利益は6%程度の減益となります。
これはさすがに弱気なものだと感じます。

まず前期の3Q決算補足説明資料(PDF)も見ながら、前期との指標を比較してみます。

<提携先金融機関数>
 前期(12月):699件
 今期(12月):727件 (+4%)

<新規保証受付件数>
 前期: 13万件
 今期: 16万件 (+23%)

<保証債務残高>
 前期(12月):8.9兆円
 今期(12月):9.8兆円 (+10%)

<代位弁済>
 前期:90億
 今期:92億 (+2%)

 
売上ベースで一番効いてくるのは、
新規保証受付件数と保証債務残高でしょうか。

新規受付件数が伸長すれば、
保証債務残高が積み上がり、
それが積み上がればその保証額が収入の源泉ですからね。

新規受付は23%と物凄い強いですが、
これは住宅ローンの件数が増えたというより、
取引金融機関先の増加や既存金融機関の深堀りが進んでいるのでしょう。

これらを見ると売上ベースでは横ばいはありえません。
10%増はいけるのではないでしょうか。
ちなみに1Qから3Qまでの売上高の増収率の推移は、
1Q単が7.8%、2Q単が6.9%、3Q単が9.9%です。
なぜ4Q単予想が▲0.1%となるのでしょうか。
そんなことはないでしょう。

前期比10%増収としてみると、4Q単計で13,180百万円位でしょうか。
この場合の4Q累計の年度着地はというと、32,130百万円となります。
四季報予想は31,800百万円ですがまぁいい予想ですね(笑)。
四季報予想の場合の前期比は+7.1%ですから、
私の保有色眼鏡を外して10%が7%程度というのはありがちなので、
まぁ四季報予想から私の予想の範囲内くらいかなという感じですかね。


一方、利益面ですが、
ここ最近の利益の好調さは代位弁済の低下が一番効果が大きいと思いますが、
実は、前述の通り、今期3Qで微増しています。
代位弁済とは景況感が大きく悪化するとその分増加し収益を圧迫するわけですから、
この動向には注視が必要なので、この微増は少し気にしないとなりませんね。
そう考えると、これまでの増益率は少し控え目に見て、
利益率は前期比微減位で見ておいた方がいいかもしれません。
営業利益率を80%として4Q単計で10,544百万円、4Q累計で24,684百万円です。
四季報予想は24,500百万円ですから、
こちらもやや強気ということになります。

同様の考え方で当期純利益を見積もりますが、これは前期並みとして、
計算して結局四季報予想と同額水準となります。

色々皮算用しましたが、結局EPS予想は四季報レベルということになりました(笑)。
とりあえずごちゃごちゃ考えても結論は従来の見通しを変えず、
四季報水準を想定しておきたいと思います。


(4)その他
決算補足説明資料(PDF)に纏められているので、
こちらを見ればOKです。
特に考察も変わりません。


3.定性確認の確認
日銀のマイナス金利導入の影響を想像しています。
マイナス金利そのものは、銀行の当座預金の一部の箇所に適用されるわけですが、
そのことが銀行の融資姿勢を変えるきっかけにもなりますし、
何より長期金利が益々低下するわけで、
歴史的な低金利が更に歴史的な水準を更新するわけです。
金利や低いということは、住宅ローンを組んで住宅を買い替えようと思うきっかけにはなります。

一方で住宅ローンのような低リスクの融資を銀行が今後積極的にやるというより、
この部分は出来るだけアウトソースして法人融資に注力してくるのが、
セオリーだと考えています。

低リスクの住宅ローンの需要は取りこぼさずにしつつ、
法人融資や市場運用を中心にアセットを組んでいこうという時に、
住宅ローンの外部の保証会社へのニーズは益々拡大する環境と認識しています。

銀行にとっては保証会社を介すことで事務費用を低減させ、
保証リスクを転嫁しつつ手数料等はゲットして、
本来の運用に注力するという形になっていくのではないかと考えています。

次期は予定通り増税があれば、
また需給にややこしい事態が発生し、不動産は駆け込み需要とやらで、
またもてはやされるかもしれず、その時に当然ながら低金利を追い風に、
住宅ローン需要も増えていくということはよい環境だと思います。

但し、この歪められた需給は皆がわかっていることで、
安易に想像できることなので、またうまく立ち回らないとやられてしまうわけですね。


4.目標株価の確認
従来の目標株価5,220円を変える予定はありません。


5.さいごに
ストック性の高い銘柄はこういう決算の時に、
短信を開く時の安心感は半端ないですね。
まぁ大丈夫でしょ~という感じで軽く開くわけですが、
昨日分析記事を書いたシュッピンなんて、
既に「業績予想の修正」と「1月月次」と「3Q決算」の3タイトルがあって、
業績予想の修正は下方とわかっていましたから、
その幅や3Qで何があったのか、ファイルを開く時のドキドキ感といったら・・・。
もう開く前に神頼みとかしていたりして・・・(笑)。

この短信ファイルを開く時の心境が
自分が無意識にとっているリスクを如実が表れるなと思います。

簡単な精査となりましたが、
同社については特に問題も変調もないと感じたので、
あまり論点がない記事となりました。

まあもう決算が出れば下げると思っているので、
週明け、相場の軟調さに輪をかけて暴落し、
シュッピンで既に虫の音になっている中で、
もうどうなってしまうのやら・・・。




7164 全国保証 東証1部 【その他金融】

同社はずっと気になっていた監視銘柄ですが、
購入に向けてより前向きに検討したく思い、
従来通りの自己流手法に従って、
内容をチェックすることにします。

まずは定量情報は以下に纏めています。
(PDFファイル直リンクとなっています)

 銘柄分析シート 7164 全国保証



1.事業内容
一言でいえば、住宅ローンの保証会社となります。

住宅ローンを借り入れする場合、
借主は一般的には保証のために連帯保証人を立てるか、
保証会社に保証を委託するかの2拓となります。

昔は連帯保証人が主流だったわけですが、
昨今の家庭事情の変化などから、
今は煩わしいことはせず、保証会社を通すことが主流です。
だいたいが住宅ローン契約を締結する際に、
保証会社を立てることが前提で折衝が行われることが多いです。

借主は一定の自分の信用度合いに応じて算出された
保証料を支払うことで住宅ローンが締結出来ます。
しかし、保証会社を立てることを前提に金融機関から話があり、
借主側にあまり選択余地がありません。

家電を買う時のように、最安値を模索するなどせず、
金融機関が提携している保証会社を使うことが前提なので、
保証料の価格決定権は金融機関や保証会社側が強くなります。
保証料高いからローン組むのやめるとか、普通は出来ないですからね。

ですから保証会社はぼったくりも程々にやっていれば、
優位な立場で保証ビジネスが運用出来ることになります。

こういう保証(保険)商品は、
原則的にはその提供会社が儲かるように設計されるので、
ビジネスモデルは強いなと思います。


事業内容としては同社は独立系という特色があります。
元々ローン保証を行う会社というのは、
多くが自行内の子会社などで行われることが多く、
しかも天下り先にもなっているようです。
ですので競合はこれらの金融機関系列の保証会社ということになります。

事業内容としては、他にカードローンやアパートローンなどの
保証についても対応はしていますが、
主力ではなく、住宅ローンの動向や保証会社としての
競争環境、コスト構造に目を向けておけばいいと思われます。



2.成長性について

足元の成長性という意味で一番寄与しているのは、
与信コストの低下ということでしょう。
つまり景況感もよく、金利も低下傾向にある中で、
延滞やデフォルトする率も下がり、
結果コストが想定以下に抑えられるというやつです。
前期くらいから、各金融機関で相次いで上方修正が出ている
要因となっているものです。
これにより、同社の利益面の成長もとても高いものとなっています。
しかし、これは今後更に成長の起爆剤となるわけではなく、
あまり成長は期待出来ないでしょう。

これは会社側も認めており、
社長や複数のIR担当者に話を伺った際に、
口を揃えて大きな成長ではなく、着実な成長と仰っていて、
結論からいえば、継続的な2桁成長はないと認識しています。

最近、ずっと成長株にシフトしていて、
15%、20%成長が当たり前になっているのですが、
元々は成長株は程々にしたいと思っていて、
この成長率がせいぜい1桁というだけで、
投資不適格とするのは尚早だと思っています。


当社の成長は保証債務残高の伸長が第一です。
これが売上(営業収益)に直結します。
(金融セクターの分析は始めてなので言葉の使い方に誤りがあればすみません)

保証債務残高が同社が引き受けているリスクのようなもので、
その積み上がりが収入になります。
そして、そのリスクが一定程度で顕在化して、
滞納やデフォルトが発生し、
その回収費用や代位弁済(保証会社として金融機関に代理で返済するコスト)の
コストが差し引かれて利益が残るわけです。

単純に考えれば、保証債務残高が積み上がらなければ話になりません。
ですから、同社はまず中計でも保証債務残高10兆円を謳っています。
こちらは現状で既に9兆円水準であり、
今後も年率5%程度は右肩上がりを想定しているようですから、
達成はするでしょう。

ここで疑問が湧きますが、
住宅ローンなんてこれから人口減だし、
構造的に減るのではないの?ということです。
しかし、同社から開示されている資料の中に、
全住宅ローン残高(約160兆円)のうち、
同社保証残高は9兆円ということで、
そのシェアはわずか5.7%という数値があります。
つまり、同社が新たに保証出来る保証債務は単純に考えれば、
あと94%近くの余地があることになります。

そして、住宅ローンの保証会社など聞いたことがありません。
少なくても主業としている上場会社は同社以外には知りません。
となると、残りの大半の債務保証をしているのは誰かということですが、
これはざっくりいえば金融機関自身なのですね。

金融機関は住宅ローン契約を取るために、
自行内の子会社などで独自に保証会社を持ち、
その会社で保証しているわけですが、
要するに自行内でそのリスクを取っているわけです。

この保証会社は、リテールの銀行OBなどの
天下り先となっているようで、
想像するに定型的なオペレーションで
単純処理をして悠々自適な審査保証をされている印象です。

となると、ある程度リスクがある顧客の保証が出来ないとか、
やたらと審査に時間を要するなどで、
実際にリーテルの現場にいる営業マンからすると、
もっとスピーディーにかつ非定型な部分を総合評価して、
保証をつけたいなどのニーズもあり、
同社のような独立系の出番となるわけです。

そもそも金融機関は住宅ローンで本気で儲けようなどとは、
サラサラ思っているはずもなく、
リスクはアウトソースして小さくお小遣いを稼ぐ感覚が
真っ当な判断だと思います。
金融機関の収益源はリテールの住宅ローンではなく、
同じリテールでもカードローンなどのより利回りが取れるものだったり、
やはり事業性融資が主でしょう。
住宅ローンでリスク計算を緻密にやって、
独自に収益柱に育てようという金融機関は異常だと思います。

そう考えると現状の自行の体力の問題で
独自に保証会社を持ちづらい信金、地銀下位行のみならず、
地銀上位行やメガバンクも提携話が広がるだろうと想像できて、
実際にそのようなリリースが出ています。
東京三菱が提携というリリースは画期的ですし、
みずほ、三井信託のメガも折衝中とのことで、
先ほどのシェアがより拡大していくことは想像に難くありません。

ということで、住宅ローンが緩やかな右肩下がりになっていけば、
むしろ金融機関のリスクテイクのアウトソース化はより進む可能性もあり、
実は同社にとっては追い風ではないかとすら思います。

とはいえ、住宅着工件数の低下や
来期はまた増税関連で騒がしくなりそうですが・・・。

同社の成長を考える時、
この金融期間のリスク管理の主体が住宅ローンから離れていくこと、
そしてその結果提携先が広がることが考えられること、
そしてそれはシェア率上昇余地を見ても実現可能性は高く、
売上に相応するトップライン(といっていいのか?)は伸びるでしょう。
しかも構造的にこれは毎期少しずつ収益化していくわけですので、
保証債務残高に紐づくストック型収益モデルとなります。


そして利益の成長を考える時に、
コスト構造にも注視が必要です。

コストは与信費用ということで、
延滞や回収不能になった時のコスト全般です。
また、審査から回収に関わるオペレーションコストですね。
前者のコストは、景況感にに大きく影響を受けるわけですが、
ここは注視が必要ですが、
リーマンや震災の時に大きく凹んでいるのかなと思いきや、
思ったほどの影響は受けていません。

そのためにも代理弁済や求償保証の推移は神経質に見ておかないといけません。

金利が上昇する局面が来た時に、
資金余裕がない上に変動金利で借りている多くの方が直面するのは、
借換えの選択だと思います。
借換えの際にも、同社の保証は新たに締結することになりますので、
住宅ローンの新規締結が落ちても、
うまくヘッジしあうのではないでしょうか。
こちらも成長性に大きな影響はないように感じます。


オペレーションコストですが、
一番のコストは信用調査の頭を使って判断をするフローでしょう。
金融機関の天下り先のように、
定型チェックであれば、
その人件費だけでよいのでしょうが、
高度なリスク管理システムを導入するためのシステム費や、
定性情報などトータルで判断出来るノウハウ人材の育成や配置など、
コスト増の要因になりそうです。
同社はこれらの高付加価値をスピーディーに原則翌日回答という対応を行い、
顧客満足とコスト抑制の両面を睨んだ対策を出されているようです。


コスト増の要因は回避は難しく、
外部要因によるところはモニタリングしていくしかありません。
またオペレーションコストはむしろ高付加価値化の効果が大きくなっているか、
そちらに注目していれば保証債務残高や提携先が更に広がり、
結果全体は底上げされるはずと考えます。


私は同社の成長性は保証債務残高の積み上がりとして年率5%~7%程度で、
ここに総量の増加に伴うオペレーションコストの最適化が図られることを踏まえ、
外部要因としての景況感が概ね変わらないという前提で
7%~9%程度つまり8%程度とみたいと思います。

 
3.株価水準について
 現在の株価は3,915円です。

 時価総額:2,696億
 PER(15.3期実績):17.8倍
 PER(16.3期会社予想):16.8倍
 PER(16.3期四季報予想):16.0倍
 PBR:4.5倍
 ROE(15.3期実績):28.0%
 DOE:6.1%
 ※優待あり(5000円クオカード又はカタログギフト)

成長率8%でPER16倍となると
PEGレシオは2倍となり、むしろ売る水準ですね。
一方、DOE6.1%は高いですね。
逆数を取ると16.4となります。

またROEが高く、諸々の条件を確認してみると、
JPX400もいけそうですね。
普段の私の監視銘柄の多くは時価総額も低く、
そもそもこの観点はないですがね。


4.リスク要因

リスク要因は前述の通り、
景況感の悪化に伴う与信コストが大幅に悪化することです。
これは繰り返しになりますが、状況を注視し、
変調があればすぐに対処することしかないでしょう。
また、今後メガバンクの対応など、
より金融機関からの引き合いが増えた時に、
オペレーションコストが悪化してしまう可能性はあります。
こちらは私はすぐに適正化されると思いますが、
業績面でこういった踊場になることは想定しておく必要がありそうです。
一方で、保証債務残高が急にトレンド変調することはないと判断しています。




5.目標株価について
目標株価ですが、
まずは18.3期EPSはCAGR8%程度とみて285と予想します。
但し、景況感の変化が概ね現状レベルであることは前提です。

評価PERですが、ストック型のビジネスモデルであること、
また独立系でかつ実質独占出来る環境であることなどを想定しつつも、
成長性は控えめですので、PERは現状から大きく変化はなく、
先ほどのJPX400採用による需給面や、
来期の増税駆け込み需要などで騒がれる時に瞬間風速で
PER20倍位まではありえるかなとは思います。
ただ、やや保守的に18倍とみておきます。

すると目標株価は5,130円と算出されます。
(時価総額で3,533億)

現状の株価からの上値余地は31%と、
私の現状PFの中では控えめです。
これを2年間の年率平均で見れば14.5%です。
目標年間利回りの15%程度になります。
と、実際にはPFの中には思い通りにならない銘柄もある中で、
このラインでOKとするのかは悩ましいですが、
ストック型の銘柄が欲しい中で、
かつ独占企業でわかりやすい点は魅力です。


6.サマリ
今の水準で買いを入れるというのは、
成長率から考えると背伸びかなという印象はありますが、
大きな成長を期待して高PERというわけでもない同社については、
私にとってはまた新たなチャレンジかもしれません。
私はチャートは読めませんが、足元で比較的調整しています。
恐らく、上方修正期待が裏切られたといったところだと思いますが、
修正有無はどちらでもいいので、
むしろ明日の暴落局面があれば、チャンスかなとも思います。

同社はそして優待が魅力ですね。
悩ましいですが、一定の水準まで落ちればとりえあず拾ってみようかと思います。
また現金が・・・という悩みは尽きません。
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