投資方針に忠実に退屈な投資で資産形成
5903 SHINPO 東証JASDAQ 【金属製品】

 さて、先日、第一印象銘柄が大量に滞留していて、
 早々に仕分けをしていかねばならぬという記事をUPしましたが、
 早速、その処理をしていきます。
 なんだか、事務処理ありきになっていて、
 本末転倒な気がしますが簡単に分析をしていきたいと思います。

1.事業内容
 無煙ロースターのメーカーで、主に焼き肉店など飲食店向けに販売しています。
 あみやき亭、物語コーポレーション(焼肉きんぐ)などの有価証券を保有しており、
 この辺りがお得意先ということになりそうです。
 これらの会社の出店戦略を見ると、まぁ現在の景況感の中、
 着々と出店は進んでいきそうですから、足元は問題ないように思います。
 無煙ロースターだけを販売しているわけではなく、
 空調や清掃など店舗運営に関わるサービスをワンストップで対応しています。
 ですから、サービス業といった方がよいかもしれません。
 なお、無煙ロースターはシェア6割を保有してトップシェアとなっています。

2.成長性について
 成長性の面では、主要取引先を中心とした飲食店の出店、改装戦略の動向によりそうです。
 IR資料を読むと、最近では個人経営店などでも順次受注を拡大してるとありますから、
 要するに焼肉屋が今後繁盛していくかどうかで成長性も判断出来そうです。

 そしてもうひとつのファクターとして、
 その繁盛店が今後も安定した業績で推移していけるかどうか、
 景気動向にも大きく左右するものと思われます。

 現在の足元の景気動向は上向きであり、当面は堅調に推移するように思います。
 が、一方で国内需要を考えた時、ここから一気に取引先が急増して、
 ビジネス規模が数倍になっていくような目まぐるしい成長性があるとも考えにくいです。
 既に当社はシェアでトップを走っていますから、そこまでの国内成長性があるとも思えません。

 当社は無煙ロースターからの幅出しとして、
 清掃や空調などの店舗運営全般へのサポートを広げようとしていますが、
 この領域は競争も激しく、利益率も低いため、あまり期待はできません。
 (実際に過去のIRで空調など低採算ビジネスで、
 なんとか売上を確保したが利益が・・・というIRも出していますしね)

 一方で中国などの海外進出も進めています。
 中国などでは実際に子会社からビジネス展開が進んでいるようです。

 確かに新興国を中心に、無煙ロースターを使った外食店舗の拡大は望めそうです。
 あくまでイメージなのですが。
 中国は地政学リスクが付きまといますが・・・。

 ということで、国内成長は頭打ち、海外で新興国を中心とした成長は魅力といったところです。

 なお、過去の業績の推移は以下の通りです。
 典型的な景気敏感銘柄ですね。

 リーマンショックで景気が冷え込むと一気に赤字転落です。
 うーん、この時点で成長性うんうん以前にダメダメとなりそうです。
 
5903_SHINPO業績

 一方でここ数年は着実に回復基調にあります。
 当社は有価証券評価損益を計上していることがあり、
 営業利益ベースで見た方が、実力値が把握できそうです。

 すると2009年あたりから右肩上がりで、
 東日本大震災を切り抜けてきています。

 リーマンの時の反省が活かされたのか、
 どうかわかりませんが、企業体質に変化が生じていると見ることもできます。

 このあたりの評価で、まず当社を投資適格と見るか不適格とみると、
 判断が分かれそうです。
 
 3.株価水準について
 現在の株価は364円です。

 時価総額:22億
 PER(14.6期実績):9.0倍
 PER(15.6期会社予想):8.8倍
 PER(15.6期四季報予想):9.0倍
 PBR:0.7倍
 ROE(14.6期実績):7.8%
 ROE(15.6期会社予想):8.0%
 ROE(14.9期四季報予想):7.8%
 配当利回り:3.3%
 ※優待なし

5903gc.gif
※ゴールデンチャート社から出力


 私はチャートを読めませんが、
 アベノミクスが始まった頃から綺麗に右肩上がりになっています。
 出来高にばらつきはあるようですが、株価の堅調な推移と共に、
 出来高もそれなりにこなしているように思います。


 4.リスク要因
 リスク要因としては、前述の通り景気に左右されるため、
 何より不況時になった際の企業価値低下が最大リスクだと思われます。

 また景気以外にも焼肉業界(?)特有の食中毒やBSE問題などの発生がリスクです。
 最近アメリカ産牛肉も輸入が平常化されていますが、
 こういう問題が再燃すると再び客離れとなり、店舗の設備投資が抑制され、
 当社にとって脅威となります。

 逆にTPP問題の決着如何では、焼肉消費の向上が見込まれ、
 これは上ブレ側のリスクとなります。

 それから、当社のIR姿勢は消極的であると言わざる得ません。
 IRサイトがあまりに貧弱な会社は、
 株主還元の点でも配慮が足りず、その点は魅力を下げています。
 ですから、株主を軽視した安易な増資などの発生リスクは想定しておく必要がありそうです。

 一方で、財務の安全性という側面では、リスクは小さいと思われます。
 自己資本比率も高く、負債もほぼ少ない上に、融資利率も低いです。
 安全性という面では特に懸念はなさそうです。

 5.目標株価について
 さて、2~3年後を展望した場合、国内の景気は拡大期になっていると思われます。
 外国人旅行者も増えており、オリンピックを前に外食産業も盛り上がりそうです。
 当社は無煙ロースターでシェアトップを取っているため、
 一定の規模でのビジネスは堅調に推移すると思われますが、
 一方で付帯サービス部分については競争も激化、人件費などの高騰で、
 成長性はせいぜい10%がよいところだと思われます。

 そういった意味で今のPER水準は妥当と思われます。

 一方海外展開をどのように見るかです。
 中国を始めとして日本ブランド製品が順調に拡張していくことを考えると、
 世界の大きなマーケットを対象にして成長性を織り込むことが可能と思われます。

 今期はフレンチ店の特損計上があるようで、横ばい水準ですが、
 四季報での予測値は翌期は40%成長ですから
 平準化させると18%成長ということになります。

 一方過去の業績面から見ていくと、
 11年6月期のEPSが4、
 14年6月期のEPSが40ですから、3年間で10倍になったことになります。
 ただこれには特殊要因やそもそも11年6月期が小さ過ぎてあまり参考になりません。
 営業利益などでみていっても、 あまり過去のトレンドは参考になりません。
 ただひとついえることは、ここから更に今の増益率を保つには、
 よほど海外が伸長しないといけないですし、
 それは先行投資などもあるでしょうから、現実的には難しいでしょう。

5903_EPS推移
5903_営業利益率推移




 となると海外の成長性を評価したとしても国内の成長性10%に対して、
 プラスアルファくらいがいいところでしょうか。

 また感覚的な評価になりますが、
 成長性は15%といったところでしょうか。
 四季報予想の翌期の予想をならした18%よりは控えめな数値予想です。
 このことから、17.6期の予想EPSを60とします。

 評価PERはもし上位市場への変更があればとも思うのですが、
 今のIR姿勢からは難しいでしょう。
 お決まりの優待や分売などが出てくればまた違った判断になりそうですが、
 現時点の評価としてはPER12倍くらいでしょうか。

 景気動向に左右されやすいなどのリスクや
 IR姿勢へのネガティブ要素を加味して成長性より厳しめな評価としました。

 すると目標株価は720円となります。

 現在の株価に対して98%割安という試算になりました。

 6.サマリ
 やはり景気敏感である点と、仕込むのであれば、
 景気拡大が余地し始めた頃に早々に仕込むべきだったかもしれません。
 それでもアベノミクス始動時点から株価はまだ2倍程度ですから、
 単純な利益の伸長率に比べると控え目にも映ります。

 これは景気に左右されやすい上に、特定の業態に特化している点での
 高リスクさを反映しているように思います。

 一方で飲食店への店舗サポートという意味では、
 2751テンポスバスターや6086シンプロメンテなどとの比較にもなります。

 現時点で両社の評価PERは四季報予想ベースで、
 シンプロメンテは17.9、テンポスバスターが13.8となっています。

 ですから、単純なPERでいえば、当社は割安ともいえますし、
 一方でそれだけリスクが織り込まれ、低評価になっているとも読めます。

 少し気になっていたのは、増税反動減なのですが、
 当社は6月決算なので、前期末の4Q単体を見るとその影響が伺い知れますが、
 前期に比べても遜色ない推移にみえます。
 確かに利益率が若干下降しているので、
 それがこの反動減の一時的な影響なのか、
 構造的な問題なのか、1Qの決算を見てみるとまた判断が変わるかもしれません。

 目標株価まではそれなりのGAPがあって投資妙味もありそうですが、
 これだけリスクが高い点を考慮すると、
 今すぐ飛びつくような状況ではないと思われるため、継続監視としたいと思います。


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