投資方針に忠実に退屈な投資で資産形成
4320 CEホールディング 東証マザーズ 【情報通信業】

 さて、「たられば」の話になりますが、
 今回の四季報で監視銘柄入りしてちょうど分析記事を書こうとしている矢先、
 1部昇格が発表され、高騰してしまいました。
 とはいえ、それなりの基準に照らして監視銘柄入りしたので、
 挫けず分析記事を書き連ねていきたいと思います。


1.事業内容
 医療情報システムを手掛けています。
 主力事業は電子カルテシステムの開発販売であり、
 当社の9割以上を当事業が占めています。
 電子カルテといっても単に病院に導入を点在させていくだけでなく、
 地域医療機関間をネットワークで結合させ、
 より有機的なデータ参照を可能とすることで、
 医療の品質向上、医療現場の作業効率化を目的とした、
 広義的なシステムと捉える必要があります。
 このシステムの商流は、直販と提携販売の両面による展開となっていますが、
 提携先には大手が多いですが、有価証券報告書上からも、
 筆頭株主でもあるNECが主流となっていることがわかります。
 MI・RA・Isシリーズとしてシェアは富士通に次いで2位となっています。
 
 電子カルテ以外の事業としては、コンシューマー向け事業として、
 大きく2つの切り口で事業化されています。
 1つめは、小さなお子様を育児されている女性向けの事業です。
 女性特有(不妊、妊娠、出産、術後ケア等)の悩みに対応する、
 医療案内サービス(Mocosuku Woman)や、
 育児サポートアプリ(もこすく)などが挙げられます。
 2つめは、主に高齢者向けのサービスで、
 高齢者向け安否・安心連絡システム(安タッチ)や、
 高齢者向け施設(La・サンフラワー)などです。

 CEホールディングス事業
※当社決算説明資料より抜粋


2.成長性について
 まず、主力となっている電子カルテシステム全般に関する、
 成長余地について考えてみたいと思います。

 当社主力商品のMI・RA・Isシリーズには、
 細かく電子カルテとオーダリングという2つの機能があるようです。
 オーダリングとは、医師の指示を看護師、薬剤師らに連携して、
 適正な処置を行うように考えられているシステムのことのようです。

 そして、当社の決算説明資料を見ると、
 電子カルテ、オーダリングの導入率を見ると、
 まだ導入率が低いことがわかります。
 特に病床数が中小規模の病院だけを見ると更に導入率は低く、
 その絶対施設数も多いですから、
 まだまだ未開拓な施設が沢山存在しているものと考えられます。

導入率
※当社決算説明資料より抜粋

 想像するに小規模の施設になればなるほど、
 設備投資などの体力余力もなく、
 高価なシステムを検討することも出来なかったのだと思います。
 さらに言えば、小規模施設など従来の方法でオペレーションしていれば、
 それで回っていたのかもしれません。
 しかし大規模施設から導入が進み、パッケージ化されたことで、
 気軽に廉価版として導入検討がしやすい状況が
 整ってきているのではないでしょうか。
 また医療施設も競争環境にさらされ、
 満足度の高いオペレーションを期待され、
 病院も選ばれる時代へと変わってきているように思います。
 となるとライバルが導入して質を高めている中で、
 自分だけが従来の方法で貫こうと思っても、
 時代の流れにはついていけない、そんな姿が目に浮かぶのです。

 さらに高齢化により医療現場は益々多忙を極め、
 より効率化を求められ、そのためにICTを活用することも、
 政策レベルで検討され、
 「医療・介護サービスの提供体制改革のための新たな財政支援制度」という名目で、
 実際に今年度も900億もの予算がついています。
 
 電子カルテそのものもだいぶ成熟期に入り、
 PKG化されたことで料金もだいぶ手頃になってきています。
 その中で、前述の通りじわじわと導入が進んでいて、
 ですがまだまだ未導入施設の割合が多いわけです。
 これからもじわじわかもしれませんが、導入は継続的に進んでいきそうです。
 特に今は設備投資が促進されているために、
 その伸長率が伸びてきており、
 それが今期の当社の上方修正にも繋がっていると考えられます。

 足元の3Q決算においても受注高は前期比20.2%と好調を維持しています。
 そして何より、過去の導入推移を見ていくと、
 よほどのことがない限り、この成長継続トレンドは続くと考えられます。

導入推移
※当社決算説明資料より抜粋


 さて、コンシューマー向けのサービスに関する成長率についてです。
 こちらは結論から先に書くと、よくわかりません(笑)。

 女性、出産、育児サポートに関する事業ですが、
 こちらは確実にニーズはあるように感じますが、
 どこまで差別化出来るかと収益性へつながるスキームが未知数です。
 女性特有の悩みはどうやら妻など見ていても大変多いですし、
 その悩みをネットで検索したりして情報収集する機会が我が家でも多かったです。
 また育児中のサポートなどもアプリで一元管理できるというのも魅力的です。
 我が家は紙管理でいつ接種をしたとか、病院にいつなにでかかったとか、
 全部を把握すうのがごちゃごちゃしているので、
 そういった情報をアプリで管理できるのはよいサービスだなと感じます。
 ただ、いかんせん、同様のサービスが多数ある中で差別化をどう見込めるかです。

 差別化はブランディングを高ていくなどの方向性は示されていますが、
 一朝一夕にブランドは高まるものではありませんし、
 基本的な機能での差別化要素は難しいかもしれません。
 その上、広告や課金スキームなど、収益にどうつなげられるのか、
 これが未知数であり、それゆえに成長性の評価が出来ません。

 また高齢者安否連絡システムについても、
 高齢化かつ孤独死などの社会問題化も踏まえれば、
 サービスそのもののニーズは確実に拡大していくと思われます。
 しかし一方で、セコムなど大手でも多くの会社が見守りサービスの提供を行っており、
 こちらも当社が獲得顧客を伸ばしていけるというシナリオが未知数です。

 一見すると医療情報サービス提供者としてシナジーもありそうに思いますが、
 よくよく考えると医療施設への拡販が中心の主力事業と、
 コンシューマー向け事業とのシナジーは発揮出来なそうにも思えます。
 そもそも売る先が違いますし、仮にある病院にかかった方が、
 その電子カルテなどの医療システムに関心をして当社の見守りサービスや、
 高齢者施設を利用しようとはならないですよね。
 医療施設としても、当社の情報システムを使っているからといって、
 患者に積極的に当社見守りサービスなどを販促するでしょうか。
 たぶんしないでしょうね。
 となると、市場全体の成長トレンドの中でどこまでそれに乗れるか、
 また現時点では収益性に繋げられていない点をどのように克服するか、
 それが重要だとは思うものの、今の私に当社がこうなるだろうという
 明確な像が描けません。

 ただ、前述の通り、コンシューマー向け事業は、
 当面はおまけのようなもので、赤字さえ早期に克服してくれさえすれば、
 長く育てていき、当たればラッキー位にしか思っていません。

 主力の電子カルテ関連事業の成長性を、
 当社の成長性と置き換えても差し支えないと考えます。

 さて、電子カルテ関連については、
 少なくても導入推移数としては、中小施設を中心にまだまだ伸びしろがあると認識し、
 今後も安定的に成長していけると考えます。

 そして大事なことは利益面での成長性をどのように織り込むかです。
 まず、過去の導入推移は前述の通り堅調に推移しているのですが、
 この推移を受けた業績推移はどうであったか、確認していきます。

 以下が過去の業績推移です。

 4320_業績推移

 まず、売上高は導入推移とほぼ同一の成長トレンドとなっています。

 一方で、利益面ではかなりがたついています。
 2006年の赤字は何があったのでしょうか。
 そして、リーマンショック、東日本大震災でも相応の影響があったように思います。
 設備投資関連ということで、景気の動向が不安定ですね。

 売上が安定して伸長している中で、利益ががたつくのは何故か。
 過去のIR資料を少し見てみると、
 過去に手掛けていたペットサイトの減損とか、
 損益分岐点に肉薄したとかそういうことでしょうか。
 さらにシステム投資がかさんだという時期もあったようです。

 ですから、現在で言うとコンシューマー向けビジネスの動向に、
 注視が必要ということですね。
 減損などということにならない範囲で赤字を抑制していければよいのですが。

 それから、一定量売れていかないと損益分岐点を超えられないのでしょう。
 最近の決算書類を見ていると、
 軒並み固定費を大きく上回る売上に支えられた旨の記載があります。
 つまり、今は販売が好調なので、利益もしっかり出ているということです。
 とすると、これから頭打ちとか景気動向によって、
 売れなくなると危ないわけですね。

 それから投資の見極めですが、
 これは確かに一過性の費用として業績悪化にも見えますが、
 継続的な当社の競争優位性を保全するためには必要なものです。
 投資の方向性がきちんと継続的優位性へ寄与するものであるか、
 こちらも気にかけておく必要がありそうです。

 少なくても外部要因を見れば、前述の通り特に懸念はありませんので、
 あとは数値として受注残に注目でしょうか。
 きちんと受注残が積み上がっていれば、それは販売が好調ということですから、
 足元の利益面での好調さも期待が継続して持てることになります。

 さて、ごちゃごちゃ書いても、
 これ以上根拠ある論理が展開できなそうなので(笑)、
 結論として、私は今期の利益成長が当面は続くのではないかと考えています。
 確かに診療報酬改定は増税分を考慮した実質ではマイナス改定です。
 これにより医療分野は厳しい事業環境が続きますが、
 だからこそ、設備投資が必要と認識されていて、
 足元でもきちんと売れているという実績になっていると考えます。

 今期の上方修正後のEPS伸長率は8.3%です。
 これは3Q単体での増税による一過性の減益を含んだものであり、
 潜在的な成長率としては12%と見込みたいと思います。
 (相変わらず根拠がないわけですが・・・)

 
 3.株価水準について
 現在の株価は1,632円です。

 時価総額:307億
 PER(13.9期実績):13.5倍
 PER(14.9期会社予想):12.6倍
 PER(14.9期四季報予想):11.6倍
 PBR:1.6倍
 ROE(13.9期実績):11.9%
 ROE(14.9期会社予想):12.7%
 ROE(14.9期四季報予想):13.8%
 配当利回り:1.2%

 ※優待なし

4320_チャート
※ゴールデンチャート社から出力


 4.リスク要因
 リスク要因として、顧客の業態の医療分野は、薬価や診療報酬といった、
 規制により価格面での縛りが強いことがリスクです。
 医療費の抑制が命題になっている中で、
 医療費を末永く賄う社会保険制度のことも視野に入れると、
 結局あおりを受けるのは、医療施設運営者になります。
 となると医療施設の収益性が悪化し、投資も減る、
 つまり当社のシステムが難しい局面になるという構図です。

 それからやはり情報通信業ということで、
 PKG製品の品質問題で、常に不採算案件の発生というリスクは存在します。
 こちらは予見できませんが、社長や社内の雰囲気を見ればなんとなくわかるものです。
 なかなか札幌本社の当社のことを身近に知れるチャンスがないのが残念ですね。

 財務面のリスクは自己資本比率は60%台と少しだけ安心材料です。
 有利子負債も少なく、財務面では問題はなさそうです。
 キャッシュフローもまぁOKです。
 銀行からの融資利率も0.8%台ですから、この安心感を反映していますね。

 5.目標株価について
 さて、前半でだいぶ有望と思って記事を書き進めていましたが、
 成長性を数値に置いた所で冷めてきてしまいました(笑)。

 事業内容などから見て、導入に関わる成長は魅力的だなと感じる一方で、
 過去の業績を踏まえた利益に関わる成長という観点からすると、
 案外渋い結果です。
 それこそ根拠も曖昧なのに、15%、20%の利益成長とは評価が出来ません。
 (いや、もしかすると成長マーケットではありそうなので、ない話ではないかもしれませんが)

 さて、前述の通り、成長率は12%、リスク要因はあるものの需要の堅調さの自信も大きいです。
 3733ソフトウェアサービスはPER13倍から15倍で評価されています。
 東証1部上場ということで、信頼性の向上などにより、
 業績にも多少なりとも堅調に推移するだろうという期待もあり、
 当社としてもPER14倍は一時的かもしれませんが、反映されても不思議ではありません。

 というわけで、17.9期の予想EPSは、
 12%成長を元にして算出すると予想EPSは183となります。
 これに瞬間風速になるかもしれませんがPER14倍までをかけます。

 すると目標株価は2,560円となります。

 現在の株価に対して57%割安という試算になりました。

 

 6.サマリ
 当社の主力事業となる、電子カルテや地域医療の拡充が旺盛に推移しそうです。
 成長性も大きいものを考えていますが、
 過去の業績推移や規制に左右される不安定な業況を考慮すると、
 あまり高い利益成長目標は置きにくいのが実情です。
 このような観点から成長率年率12%、評価PER14倍で評価すると、
 目標株価は2,560円となりました。
 これは現在の株価水準から中途半端な状況であり、
 前述の成長性をきちんと見込める方は買ってもよいかなという程度の印象です。

 私のようにマクロトレンドはある程度織り込めるものの、
 当社の品質がどこまで有益なものとして浸透していけるか、
 推し量りの自信がない場合は、もう少し様子見をしてもよい水準かなと考えます。

 とりあえず3Q単体の落ち込みが本当に一過性かどうか、
 期末決算を見てから、冷静に考えたいと思います。

 7.その他メモ
 ・優待実施は想定していない。(配当還元重視)
  →の割に、配当性向、利回りが低い

 ・駅探を持分法適用会社
  →コンシューマー向けサービスとのシナジー発揮。 


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